しんぷる・が・べすと

「愛に時間を」

からあげ食べて、君が来て

たまに行く、からあげ屋さんがあります。

そこでは弁当も売っているのだけれど、からあげがやたらとでっかくて、味も濃ゆくって、僕なんかはいつも「ミニ」を頼みます。

「中」でからあげが4個入ってて、「小」で3個。

3個でも多い僕はいつも2個の「ミニ」を頼むわけです。

 

一昨日に行ったときも、僕は変わらず「ミニ」を頼みました。

 

「お持ち帰りですか?」

 

店内には4席ばかり用意されていて、イートインもできるようになっています。

その日は店内で食べて行こうと心に決めていたので、迷うことなく答えました。

 

「いえ、店内で」

「そうしますと消費税が変わってきまして……」

「全然全然、大丈夫ですので」

 

高々数円なんのその。

万を超えるような金額ならばいざ知らず、数百円のものの税が8%から10%になったところで気を揉むほどお金には困っていない。

 

お席につき、一息つき、読書で待つき。

少しして店員さんが「〇〇番でお待ちのお客様~」と『いちご同盟』に思いを馳せる僕に声を掛けながら、弁当のパックを裸のまま持って近寄ってきました。

というのも、テイクアウトならばビニール袋に(無料で)入れてくれるのですが、イートインならばそのまま渡されます。

 

どうもどうも、わざわざありがとうございます。

それではいただきますおさん。

あー今日もニンニクが臭くて美味しいなーはむはむ。

 

そんな中身のないことを思いながら口臭をまき散らしていると、ヤンキーみたいな人がお店に入ってきました。

 

おう大将やってる?(やってるわ

横目でしか見てないのでわからないですが、あれは多分ヤンキーだったと思います(ヤンキーの定義は知らないけど)(なお画像はイメージである)。

 

そうしたらそのヤンキー、何かを注文して、ドカッと席に座ったんですね。

何を頼んだかまではわからなかったけれど、テイクアウトの人が待つ席ではなく、僕と同じイートインの席に座ったんです。

 

あ、この人もイートインなのかな?

 

少しして番号が呼ばれました。

「〇〇番でお待ちのお客様~!」

 

あ、これはテイクアウトですね。

テイクアウトだと取りに行くんですよ。

 

そしたらそのヤンキー、袋に入れた弁当を手に提げてたんですね。

 

あ、やっぱりテイクアウトですね。

テイクアウトだと袋に入れてもらえるんですよ。

 

そしたらそのヤンキー、席に座っておもむろに袋から弁当を取り出して食べ始めたんですね。

 

あ、これはイートインですね。

イートインだとここで食べるんですよ。

 

 

 

いや、君のそれ、テイクアウトだよね?

 

イートインだっけ?

 

あれ?

 

ん?

 

テイクイン?

 

え?

 

イートアウト?

 

あれ?

 

ん?

 

 

 

君、もしかして、確信犯?

 

 

 

いや、わからないけどね。

もしかしたら店員さんがうっかり持ち帰りかどうか聞くの忘れちゃって、ヤンキーは流されるままに受け取っただけなのかもしれないし。

そしてよく考えずに僕を見て「あ、ここで食べてけるんじゃん」って思って食べただけなのかもしれないし。

健気なヤンキー。

 

しかしいずれにせよ用意されたものは間違いなくテイクアウト。

 

店員さんも何も言わないもんなんだな。

ここに僕という税率10%の男がいるにもかかわらず。

いや別にいいんだけどさ、税に気を揉むほどお金に困ってないし(二度目)。

そもそも損をしてるわけでもないんだし。

 

でも僕というお客様の立場を考えると……云々。

 

そんなようなことを考えながら一生懸命に食べていたのですが、そのヤンキーは「ミニ」の僕よりも早くに食べちゃって、さっさと出て行ってしまいました。

もしかしたら確信犯で、急いで食べて、逃げるように出て行ったのかもしれないし、ただの早食いチャンピオンだったのかもしれない。

 

どっちだろうか。

それは果たして誰にもわからない。

 

税に気を揉んだのかしら。

あるいはそうかもしれない。

 

そうかもしれないが、そうではないかもしれない。

 

そしたら多分どっちかだ(そりゃあね

 

おしまい